ガタゴト日記

ゆるやかな生活
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雲の研究 30

今日は久しぶりに『雲の研究』です。

皆さんご存知、積乱雲をお送りします。
夏も終わりに近づきましたが、
夏の代表、積乱雲(入道雲)です。

いつものようにギャヴィン・プレイター=ピニー氏の
『「雲」の楽しみ方』から抜粋します。



積乱雲
━そそり立つ怒れる王「かみなり雲」

雲は気ままで気さくなふわふわの友人だ。
但し、多分例外が一つ・・・それは積乱雲だ。
荒れ狂う天気の日には、この積乱雲の活動が
最高潮に達していると思って間違いない。

13.08.26積乱雲01

巨大な積乱雲は、滝の様な大雨や大降りの雹、吹雪、
雷、突風、竜巻、ハリケーンなどを巻き起こして
多くの人命を奪い、土地家屋に甚大な被害をもたらす。
雷を落として子供たちを震え上がらせもする。

13.08.26雷01

発達した積乱雲は、世界最高峰のチョモランマよりも
はるかに高くなる事がある。
最大級のものは熱帯地域に発生しやすく、
地上600mの雲底から盛り上がって
18,000mもの高さに達する。

これほど巨大な積乱雲の内部エネルギーは、
広島に落とされた原爆の10倍にも相当する。
別名「雲の王」と呼ばれるのもむべなるかな、だ。

13.08.26スターウォーズ03

しかしそんな名も、私(ギャヴィン氏)にはまだ
甘っちょろく聞こえる。
私は積乱雲を雲界のダース・ベイダーと呼びたい。
『スター・ウォーズ』の悪役と同じく、
数多くの雲の中でも最も特筆すべきキャラクターだ。

13.08.26スターウォーズ04

ダークサイドのフォースを操るその姿と比べたら、
息子のルーク・スカイウォーカーなど
━こちらはお天気雲の積雲━
へなちょこ野郎だ。

この魔物が暴れている時には、草の上に仰向けに寝て
ひつじ雲を見上げる様な暢気な事はしていられない。
「雲の王」積乱雲は怒り狂った王だ。

13.08.26積乱雲16

積乱雲は飛行機にとっても、恐ろしい敵だ。
大粒の雹は機体をひどく傷つけ、雷は電気系統を破壊する。
雲頂の過冷却の水滴は、
翼を氷の膜で覆って飛行機を航行不能に陥らせる。

最大の危険は、雲の中心をなす強力な乱気流に
パンケーキよろしくひっくり返されることだ。

13.08.26乱気流02

そんな積乱雲をパイロットが
なんとしても避けようとするのも不思議はない。

迂回出来ないとなると、高高度を飛べる飛行機なら
雲の上を飛び越そうとする。

13.08.28米空軍01
(イメージです)

1959年の夏、アメリカ空軍の
ウィリアム・ランキン中佐が試みたのがまさにそれだ。
乗っていたジェット戦闘機のエンジンが故障し、
ランキン中佐は飛行機から脱出せざるを得なくなった。

そして雲の王の中心部を落下するという恐怖の事故から生還し、
その体験を語ったただ一人の人物として
一躍世界に名が知れ渡ったのである。

13.08.28米空軍03

それは、マサチューセッツ州にある海軍サウスウェーマス航空基地から
ノースカロライナ州ビューフォートの所属部隊の本部を
目指した70分の飛行中の事だった。

出発前、ランキン中佐は空軍基地の気象予測担当官から
途中で雷雨に遭うかもしれないと聞いていた。
雷雲は9,000〜13,000mの高さに達する事がある。

中佐は第二次世界大戦と朝鮮戦争で受勲した歴戦の軍人だ。
それくらいの飛行は朝飯前だった。

搭乗予定の飛行機がゆうに15,000mまで
上昇出来るのは分かっていたから、
嵐の上を難なく飛び越える自信があった。
もちろん、雷雲の真上でエンジン故障にみまわれなければの話だが。

13.08.28米空軍02
離陸から40分後、ヴァージニア州ノーフォークに近づいた頃、
ランキン中佐は前方に
典型的な積乱雲が発生しているのに気づいた。

荒れ狂う嵐が真下の町を襲い、
雲は巨大な対流に乗ってもくもくとキノコの様に膨れ上がっている。
雲頂はおそらく13,000m。

サウスウェーマス航空基地で
気象担当官に警告されたよりも高い。
中佐は14,600mまで上昇して雷雲をかわす事にした。

13.08.26積乱雲05

高度14,300m、速度マッハ0.82で、
雲を越えようとしたその時だ。
ドカンと大きい音が聞こえ、
後方でエンジンの回転が落ち、
「火災発生」の赤い文字が点滅し始めたのだ。

この様な原因不明の突然のエンジン停止は100万回に1度の
滅多にない事故で、
ランキン中佐は速やかに行動しなくてはならない事を分かっていた。

13.08.26積乱雲02

エンジンの停止した飛行機は制御不能になり、
中佐は反射的にレバーに手を伸ばした。
補助電力を作動させて緊急用の電気系統を回復させるのだ。

ところが、レバーを引いて中佐は青くなった。
手応えがないのだ。
まるでバスター・キートンの喜劇の1シーンの様だが、
中佐にしてみれば笑っている場合ではない。

13.08.26積乱雲03

身に付けているのは夏用の薄手の飛行服だけ。
その高度で脱出するのは、最良の条件でも
前代未聞だ。
ましてや機密服も着ずにそんな事をするのは
自殺行為だった。

「外気温はマイナス50℃に近かった。」と
ランキン中佐は後に振り返っている。
「凍傷になっても傷は治るだろうが、
上空15,000mでの『爆発的な』減圧は?
真下の嵐は?飛行機がこんなにボロボロになるなら、
生身の人間は一体どうなってしまうのだろう?」

13.08.26積乱雲11

考えている暇はなかった。
はっと我に返った中佐は、頭の後に手を伸ばして
脱出レバーを思い切り引く他に、選択肢はないのだと気付いた。

ほぼ午後6時きっかり、
ランキン中佐はコックピットを脱出し、
雲に向かって落下し始めた。

13.08.26パラシュート01



今日はここまでにしましょう。
次回をお楽しみに。

今日も写真はYahoo!検索から。



『雲の峰』

入道雲の事。この雲は、地方によって
「坂東太郎」や「丹波太郎」の呼び名はあっても、
長く標準語の呼び名がなかった。
貴族達の短歌や連歌の題材にもほとんどならなかった。
俳句では、漢詩の影響で
芭蕉が「雲の峰」の語を使って以後、
夏の季語として使われるようになった。

━『雲の言葉』300語より

ちなみに・・・

雲の峰 幾つ崩れて 月の山
芭蕉『奥の細道』
 

雲の研究 29

モーニング・グローリー』も最後になりました。
今回も『「」の楽しみ方』(ギャヴィン・プレイター=ピニー著)
から抜粋します。



モーニング・グローリー
つづき 03

13.04.24MG03

最初にこれを体験した人
誰一人そんな事出来るとは思ってもいなかったに、
真っ先グライダー上昇して
 この雲波乗りをした人は、
どんな風に感じたのだろう

この問いに答えられるのは世界で二人だけ
そしてその一人ラッセル・ホワイトだ。
バークタウンに集まったグライダー乗りたち
始終彼の名口にしていた

13.04.24グライダー01

ホワイトグライダー乗り伝説的存在だった。
モーニング・グローリーでのソアリング
彼らがこれほど夢中になったのも
そもそも1989年の春にホワイトと相棒のロブ・トンプソン
 初めての飛行成功したからこそなのだ。

ホワイトモーニング・グローリー詣で常連だが、
今年はバークタウン来られなかった
私(ギャヴィン氏)は彼の自宅に電話して
この雲との最初の出会いについて訊ねてみた

13.04.24グレートバリアリーフ01

ホワイトトンプソン飛行機グレート・バリア・リーフ飛び
 船乗って数日を過ごすうちに船長から
この珍しい雲の話聞いた

二人共、山に発生する気流で長年グライディング楽しんでいた
 UFO形高層雲レンズ雲作るのは空気の定常波だが、
モーニング・グローリー作るのは移動する波だ。

13.04.24MG01

二つの違い川の水の流れ大きい石越える時
静止して見える水面波頭と、
 海岸打ち寄せる進行波違いと同じ事だが、
二人どちらの気流でも
グライディング原則同じはずだと考えた。

モーニング・グローリー動く波乗れたら
きっと素晴らしい違いない
二人確かな予感胸に
 船上ビール飲みながら決めた

13.04.24モーターグライダー01

明日その雲見つけにホワイトモーター・グライダー
バークタウン飛ぼう

ホワイト振り返る
到着した途端に、職場でトラブルがあって
翌日帰らなければならなくなった。」

がっかりしてベッドに入った二人だったが
 もし翌朝モーニング・グローリーやって来たら
出発前挑戦してみよう心に決めていた

13.04.24MG06

 「目覚まし時計飛行機積んだままだった
 まだシャワー浴びているところだった
その時ロブが部屋に駆け込んで来て
きたぞ!叫んだ。」

取るものも取り敢えず飛行機まで車に乗せてもらい
 グライダー滑走路走り始めた時には、
近付いて来る雲はほとんど頭上まで達していた

モーニング・グローリー避けて離陸したよ。」
 グライダーこの雲向かって絶対に離陸してはいけない事は、
今では常識だ。
「その時やり方など決まっていなかった
何度も飛びながら自分たちで決めていったんだ。」

13.04.24MG02

の方へグライダー向きを変えると
高度300m達しないうちに機体押し上げる
気流の力を感じた。

「あんなに素晴らしい飛行はないよ。」
ホワイトの声上ずっている
二人共感動のあまりぼうっとしてしまった
この雲発見し、それでサーフィンしたんだって思うと、
もう有頂天だったね。とにかく凄かった。」

13.04.24MG04

この記念すべき日二人が乗ったモーニング・グローリー
どちらかといえば小さめで
長さはわずか50km弱高さ900mだった。

1時間半初飛行を終えた後も
 二人はまだ熱に浮かされたようだった
南への帰路の途中
オーストラリア屈指グライディング・クラブ
モーニング・グローリー飛んで来たと触れ回った

誰も信じてくれなかった。」
ホワイト笑う
取り合ってもらえないんだ
皆、作り話としか思わない
それで翌年カメラ持ってもう一度出かけたんだ。」
13.04.24カメラ02
 グライダー雑誌に掲載されたホワイト記事や、
続いてトンプソンが撮影した
 短い記録映像を通じて評判が広まり
スリル求めて春のバークタウン詣でをする者が現われ始めた

と言っても、今日までに実際この雲飛んだ者
数十人すぎないだろうという
モーニング・グローリーパイオニアになって
 鼻が高いでしょうね訊ねると
ホワイトはこう答えた

「そりゃあ大満足さ。
ヒマラヤ山脈見た事のない人に、
どんな眺めかを正確に伝えられるだろうか
とても無理だね。自分の目見るしかない
モーニング・グローリー同じ
途轍もなく素晴らしい体験だが、
それを知るにはそこへ行くしかないんだ。」

13.04.24MG05

宿に戻り祝宴の席料理ビール流し込みながら
私はそこに集合したグライダーマンたちに
雲を愛でる会』を設立した事話した

そして我らのふわふわした友弁護する為
 練習重ねたスピーチ披露し始めた

もしも来る日も来る日も青一色の空ばかりだったら、
人生退屈でしょう━
私は声を張り上げ
アメリカの随筆家ラルフ・ウォルドー・エマソン言葉引用した。

13.04.24エマソン01

日々であり・・・
比類ない天上の美術館だ。」
そしてさらに続けた

 「大気の顔です。
は自らの気持ち表現し、
目に見えない気流状態教えてくれるのです
そして・・・大自然紡ぎ出す詩だ・・・」
という件にいよいよ入ろうとした処
皆が笑っている

13.04.24オナガイヌワシ01

中の一人言った
雲の間飛んでいると心が安らぐんだよ
空の上では飛んでいる鳥たちと仲間になれる
オナガイヌワシみたいな鳥も
一緒に飛んでくれる
雲の中にいると、創造主の存在
信じずにはいられないよ。」

想いを同じくする雲ウォッチャーでなければ
誰がこんな遠くのちっぽけな町などにやって来るだろう
 遥々地球の裏側まで来て
釈迦に説法をしてしまった。



これで、『モーニング・グローリー』はおしまい
次は、どんな雲でしょうか?
今日もYahoo!検索のお世話になりました。

雲知らぬ雨

雲から落ちたのでない
つまりの事

━『雲の言葉』300語より

雲の研究 28

今日も『モーニング・グローリー』です。
今回もギャヴィン・プレイター=ピニー氏
『「の楽しみ方』から抜粋しました。



モーニング・グローリー
つづき 02

13.03.14mg34

近くのベンティング島に住むアボリジニの老婦人が、
モーニング・グローリーを運んで来る風を呼ぶ
 伝統的な踊り知っているという。

迷わず私(ギャヴィン氏)は霊力すがるべく島へ渡る手配をした。
 望み薄なのは百も承知だったが、
とどのつまりは、溺れる者は藁をも掴む心境だった。

13.03.14mg13

ベンディング島のコンクリートの波止場で船を降りる
マングローブ木陰で女たちがおしゃべりしていた。

アボリジニの女たちモーニング・グローリーとの係わり
他所からやって来るグライダー乗り科学者のものとは
かなり違う事が間もなく分かった。

「『イッピッピー』と呼んでいたよ。
アボリジニの言葉ではそういう名前だった」
アボリジニの女、ネッタが言う。

この名前には、雨期を運ぶ雲と言う意味があるそうだ。
 雨季10月後半あたりから始まる。

13.03.02mg19

風が吹くイッピッピー連れて来るから
用心するようにって、母さんはいつも言っていた
それから、滝の様な土砂降りがやって来る。
ダンダーマン』と言うんだ。とても危険な雨だよ。」

 数年前に小型飛行機墜落した話をしてくれた。
アボリジニ4人を乗せ、本土へ向かう途中事故だった。
いくつものモーニング・グローリー
1度に現われるという珍しい現象のせいだ。

13.03.14mg25

四方八方からイッピッピーがどんどんやって来た
━全く突然にね」
事故があったのは朝の早い時間だったという。

あの雲回転して集まって来のが見えたよ。
そう、雲のやつら笑いながら言ってた
 こんな天気飛行機飛ばすなんて
どうかしてるぜって」
ネッタは声を震わせた
その飛行機乗っていたのだという

午後になって、やっとプールの飛行機捜索に来た。
遺体一つも見つからなかったよ・・・
見つかったのは妹のバッグだけだった
ちょうど前日4人の命日だったという。

13.02.16ヨーク岬01

モーニング・グローリー
北東ヨーク岬半島方向からやって来るとは限らないと
クリスティ博士説明してくれたのを思い出した

まれに南や南東から現われる事もある
その場合発生させる空気の波作るのは
マウントアイザの高地上空発生した雷雨の活動だそうだ。

モーニング・グローリーあちこちから来て行き交うと
その地点の大気大きく乱れるから
極めて危険だとも博士は言っていた。

13.03.14mg15 13.03.14mg14

悲劇的な事故見舞われたにもかかわらず
ベンディング島女たち
恨み抱いてはいないらしい

自然の破壊力前では
なすすべはないのだ諦めているようだ
ネッタはそこにいた島の年寄り中でも長老格ドーンに頼んで
 「ワムーアダンス踊って
モーニング・グローリー連れて来る風
呼んでもらおう言ってくれた

13.03.14mg35

ドーン浜の砂一つかみして宙に撒く
足踏みをしながら歌い始めた
孫たちはくすくす笑いながら祖母動きをまねる
儀式伝えられているようでもある

来るのが分かる?」とネッタ聞く
 そよ風がふわりと吹いたような気がした
島を去る時に聞こえた椰子かすかな葉ずれ
 イッピッピー連れて来る風だとは思えなかった

13.03.14mg16

はたして、翌朝何も来なかった
私の浮かない顔見てプールが言った
好きな時出したり引っ込めたり出来るわけがないのさ
全く、英国人客ってのは
何でも思い通りにしたがるんだから!」

だがその日、私は運が向いてきた気がしてきた
 北東から海風吹き始め、
午後にはパブの男が、冷蔵庫のガラスドア
かすかに曇っているのを見せてくれたのだ

13.03.14mg24

そして翌朝5時窓の外に目をやると地平線
黒っぽい線見えた
こいつだ

手探りで慌てて服を着る
宿の前の人気のない道路飛び出した
まだ暗くが一匹狂ったように吠えている

あたりで吹き出すのを感じ
それと同時に道路向こうに達した

13.03.14mg18

 満月照らされて
高く盛り上がった滑らかな前面が、
の様に冷たい光沢を放ちながら
地平線両側伸びている

茫然と立ちすくんでいると
は町の制限速度をやや超えるスピード
道路向こうからこちらに向かって来た

前面起伏迫り上がって行き、
雲頂向こう側消えて後ろにくるりと
一回転したように見えた。
巨大だ

13.03.14mg19

通り過ぎざま南十字星遮って町を影で覆う
背面前面全く違い
 積雲似たカリフラワー状でこぼこした雲の襞
月光浴びて銀と黒に染まって降りて来る

 これこそ、遥々地球半周して見に来た雲だ。
しかし、やって来たのが夜明け前だったので、
見えたのは一部分だけだった

 コーヒー飲もうと宿引き返す私の気分は、
まるで人食いザメ退治しに来たのに
水面を割ったひれちらり見えただけ
といったところだ。

 明け切った朝の光の中で、
この怪物全貌をしかと目に収めるのが
待ち遠しくてたまらなかった

13.02.16グライダー01

飛行場へ行くと、グライダー増えていた
 遊覧飛行パイロットをしているリック・ボウイは、
バークタウン通い3年目で、
モーニング・グローリーすごい揚力得られるからね
それどんなものか実感できる
時速260キロ飛んだ事もあるんだ

モーニング・グローリー前面生じる頼もしい揚力は、
どんなに大胆な操縦にもチャレンジ出来る
理想の条件なのだという。

13.03.14mg11

正面真上まで飛んで
 サーフィンみたいに滑り降りるんだよ
ボウイ片手大きく広げ
グライダー動き真似てみせる

片翼の先を雲の中入れたまま
表面沿って下りる
雲の底まで一気に
曲芸飛行宙返り出来る・・」

13.02.16曲芸飛行02

それにしても、危険ではないのだろうか
「ああ、この回転する空気の波には
たっぷり用心しなくては
何をするか分からないからね
海から内陸入って衰えたら
揚力なくなってしまうよ」

中心部と後部下降気流による乱気流は、
何が何でも避けなければならない
 サーファー通常の海波の上転倒したら、
びしょ濡れになる

13.03.14mg12

グライダー乗りモーニング・グローリー乗っている時
高度1200mの所同じ事起こったら
もっと恐ろしい事になる。
ボウイ注意してくれた。

この辺辺鄙な所だし、
 ワニがうようよしているから気を付けないと
 パラシュート着地しても、
誰もすぐには駆け付けてくれない

13.03.14mg17

その男たちの間で期待高まるのが感じられた
 翌朝モーニング・グローリー再来告げる
あらゆる兆候見られたのだ

海風は一日中吹き
 カフェテーブル四隅がひどく反り返り
ワイリー爺さんパブカウンターに立って、
冷蔵庫のガラスドアが間違いなく曇っていると確認し合った。

13.03.14mg32

いよいよだ
ただ一つの気がかり前回ほど人迷惑でない時間
現われてくれるかどうかだった
 早起ききつい訳ではない

明るくなってから来てくれない事には
 グライダー飛び立って
波乗りをするのは無理なのだ。

午前5時飛行場に着くと、もうお馴染面々
滑走路勢ぞろいしていた
私はボウイのグライダー付いた水滴
拭き取るのを手伝った

13.02.16グライダー02

 水滴付くのはそれだけ空気湿気含んでいて
雲日和だという事だから、
有難い兆候である事はあるのだが、
を通る空気の流れ変わってしまうので
グライダー制御しにくくなるという。

飛行出来る明るさになるとグライダーマンたち
待ちかねたとばかりに愛機乗り込み
 昇る朝日向かって次々と飛び立った

プールと私急いで後を追う
 こちらに向かって回転して来るのは
1つでなく3つのモーニング・グローリーだった。

13.03.02mg12

1番手前表面滑らか光沢があり、
地上から150mの空まるで雪を被った 
 巨大な氷河浮かんでいる様だ。

2番目と3番目最初通った後
乱気流膨らみむくむくした凹凸がある。
空中から見ると3つの雲途轍もなく長く
沿って両方向うねっていく

離陸する前セスナ機サイドドア外しておいたので
雲と私隔てるガラスない
はとても清らかで滑らかで明るかった
その上に飛び降りてみたくなるほどだった

13.02.16Mグローリー06

1番目背にしたグライダーは、どれもちっぽけに見えた
 サーファーの様に、グライダーマンたち
先端下向きに滑空する。

急降下する様にスピード上がる
前面では絶えず揚力生じる為
 急降下と言っても高度保ったまま急降下だ。

それから今度正面斜面沿って昇って行き
片翼下げて機体大きく傾け方向転換する。
遠くから眺めるとボウイ正面宙返りしている

13.02.16曲芸飛行01

 昇り始めた朝日浴びてグライダー
白く艶やかなサーフボードの様に煌き
巨大な空気うねり切り裂いていく

ケン・ジェレフ今年見る事の叶わなかった
この光景目にしたら
どんなに悔しがるだろう

ジェレフはこう言っていた
飛び始めて10分か15分すると、
 雲の上太陽が顔をのぞかせる
振り向くとふわふわした巨大な雲の波後ろから
金色太陽姿現わす
まるでルネッサン期イタリア絵画の様な眺めだよ
ここは天国みたいな気分になる。
それ程素晴らしいんだ

13.03.14mg33

ジェレフ言った通りまばゆく輝いている
この雲でのソアリング(滑空)がどんなものかは、
実際体験しなくちゃ分からない
 時々つねりたくなるよ。
本当の事なんだぞって」

 この雲会う為遥々地球裏側からやって来て
ついにこうして目にかかれた
太陽は既に北東水平線離れ
私は手をかざして眩しい光線避けた

表面流れ落ち
沿って長く暖かい影出来る
空気前進するにつれて凹凸
ゆっくり迫り上がり
そして雲頂越えて見えなくなった



今日は、モーニング・グローリー出会えたところで
終りにしましょう
今日の写真もYahoo!検索から。
次回も続きますよ。お楽しみに。



(カケハシ)千鳥

かけるのが無理なように、
達し難い望み事。
千鳥も、
あり得ない組み合わせ相応しくない事。
恋文常套句だった。

━『雲の言葉』300語より

雲の研究 27

今日は『モーニング・グローリー』の続きです。
いつもの様にギャヴィン・プレイター=ピニー氏
『「」の楽しみ方』から抜粋します。

 

モーニング・グローリー
つづき 01

1860年代に牛飼いの為の
物資供給拠点として拓かれたバークタウンは、
湾岸地域北部湿原地帯
 南部草原地帯を分ける
自然の境界線上に位置する。

13.02.16Mグローリー08

この地方では最も古い町で、
サイクロンや伝染病や黄熱といった
災禍くぐり抜けてきた
いかにも僻地の町らしく、
赤土の埃っぽい道路沿いに
土台の不揃いなトタンの建物が点在している。

13.03.02mg01

 ジープを走らせていると、
暖まりつつある空気の中で、
大型で灰色オーストラリアヅルが 
幹線道路を悠然と歩き
ワラビーが慌てて茂みに逃げ込む

1865年に建てられた税関の建物
当時のまま保存され、
 町ただ一軒パブになっている。
そこで出会ったフランキー・ワイリー爺さん
店に入り浸り

13.02.16パブ02

ワイリー爺さんには、しょげている雲ウォッチャー
 元気づけるのはお手のもの様だった。

あの雲いつ現れるか分からんのだよ
9月の末にやって来るというが、
1月になるまで来ないかもしれん。
確かな事は分からんのだ誰にも。」

爺さんは「駐車禁止」のマークが付いたバーの椅子腰かけ
名入りの革の保冷ホルダーに入れた
 ビールの小瓶を手にして思い出話語り出した

13.03.02mg02

初めてモーニング・グローリー見たのは
ここへ越してきた79年だった。
むろん、ただの雲なら世界中どこにいたって
やって来るのが見られるさ。
 だがな、やつひっくり返るんだよ。」

そう言いながら両手をまわし、
円筒状が向こうから
ぐるぐる回転しながら近付いてくる様子を
身振りで表わす

13.02.16Mグローリー09

「この雲が近付いてくるのを見ると
 ちょっと待てよ、何か変だぞ、と感じる
爺さん酔いを醒まそうとする様に頭を振る)。
目がおかしくなったか、さもなきゃ飲み過ぎだ
到底、信じられんからな。」

店のコルクボードには、
 地元の釣り人たちの写真一緒に
町の上空を通り過ぎる巨大な雲の写真
何枚か貼ってある

この雲やって来る、土も葉っぱも、
 なんでもかんでも巻き上げちまう
通り過ぎた後空気ぴたりと動かなくなる
全くの、完全な無風状態だ。
実に奇妙な体験だよ。
どうしてあんなふうに風が止むのか。」

13.02.16Mグローリー07

首都キャンベラにあるオーストラリア国立大学地球科学研究所
ダグ・クリスティ博士なら、そんな疑問にも答えられる
 そこで翌日、公衆電話から博士に連絡を取った

 電話ボックスはバークタウンの郵便局の外にあり
その郵便局カウンターの上にも
別のモーニング・グローリー写真飾られている
これほどの田舎町では
有名人並みの待遇を受けるらしい。

13.03.02mg10

ニューヨークのピザ屋に、
ロバート・デ・ニーロがピザ・マルゲリータを注文している
サイン入りの写真がこれ見よがしに飾ってある様に
バークタウンではあらゆる公共の場所に、
この有名な春の珍客が来訪した
記念の印が残されているのだ。

そうした写真出くわす度に、
ますますこの目で見たいという気持ちが強くなった

13.02.16Mグローリー06

クリスティ博士
「大振幅の大気波の擾乱(ジョウラン)」が専門
モーニング・グローリー世界的権威とされている。

博士は1970年にオーストラリア中央部にある
 同大学の研究施設で、
超高感度微気圧計装置示す数値関心を抱いた

原因は非常に大きな大気の波だと考え
発生場所カーペンタリア湾であることを突き止めた
北へ600キロ余りも離れた所だ。

13.02.16ヨーク岬01 13.02.16ヨーク岬02

1980年に初めてバークタウン訪れて以来
クリスティ博士はこの地域で多数の実験を行ない、
モーニング・グローリーという現象について
現在最も受け入れられている打ち出した

博士によれば、この雲巨大な空気
孤立波の中心発生する。
空気の波生まれるのは湾の北東対岸の
ヨーク岬半島上空らしく、
それが一個の独立した波頭となって移動する。

ヨーク岬半島上空で、互いに反対方向に吹く
海風の気流
衝突して
この波出来る事ほぼ確実です。」
と、クリスティ博士は説明する。

13.03.02mg11

「しかし、この大気波の擾乱について
詳しい事よく分かっていません
不可解な事がたくさんあるのです。

例えば、何故これほど様々なタイプ
モーニング・グローリーがあるのか。
 孤立波がたった一つか二つの時もあれば、
いくつも連続する時もある。
非常に長い距離に渡って広がる場合もあるし、
全く広がらない場合もあるのです。」

私は、同種の雲他の場所でも
現われないのかと博士に訊ねてみた

 「アメリカの中央部で発生しますよ。
 イギリス海峡でも例があるし、
 ベルリンに押し寄せる霧もほとんど同じもので、
殊に1968年に発生した霧がそうでした。
 ロシア東部でもあるし、
 オーストラリアは沿岸部ならばほぼ全域目撃されています。」

13.03.02mg19

なんだって?私(ギャヴィン氏)はイギリス海峡
見られたかもしれない雲を拝むに、
わざわざ地球の裏側まで来たってことか?

しかし、博士雲ウォッチングをしにバークタウンまで
来た甲斐大いにある言って安心させてくれた。
ここで見られるモーニング・グローリー
他に例がないほど桁外れに規模が大きいというし
更に心強かったのは次の言葉だった。

長年研究を続けていますが、
特定の季節に見られる
確率が高い分かった場所は、
いまだにここだけです。」

要するに、ここより他の場所では、
いつ見られるか見当もつかないのだ

13.03.02mg15

 天侯どんな条件気を付けていればいいか
博士に訊ねると
いい海風一日中吹いて
 海の水蒸気をたくさん運ぶと同時に、
いい導波路』が出来る」のを
待つようにとの答えだった。

導波路というのは、雲の通り道空気
平らにならされた状態考えればいい
その状態になると、
 孤立波渡って来る時壊れて
消散してしまう可能性低いのだ

これらの条件加えて
 ヨーク岬半島上空気圧尾根出来れば
モーニング・グローリー見られると
保証されたようなもの」だそうだ。

13.03.02mg18

地元の人たち気圧の尾根など
気にかけるたちではない
 彼らなりに、科学とはやや縁の薄い方法
雲の訪れ予測する。

その一つは、いうまでもなく
 ビールに縁がある。
モーニング・グローリー発生するだけの
充分な湿気がある時は、
 パブの冷蔵庫ガラスドア曇る

13.02.16冷蔵庫01

もう一つの目安は、
 ポール・プールのカフェの安っぽい
木製テーブル四隅がやはり
湿気反り返ることだ

 しかし、念の為に4時半起きてみた翌日も、
その又翌日も、
冷蔵庫ドア曇らず
カフェテーブルは見渡す限り
果てしないサバンナさながらに平らだった

  

今日は、ここまでまだ出会えませんでしたね
つづきは次回お楽しみに

写真とイラストはYahoo!検索でした。

雲隠
雲に隠れること。人が行方をくらますこと
くもがくりともいう
 源氏物語雲隠は、巻名のみ本文がなく
光源氏死を象徴する。

━『雲の言葉』300語より

雲の研究 26

今日は、特別編です。
モーニング・グローリー』の第1回目は
いつもの様にギャヴィン・プレイター=ピニー氏
『「」の楽しみ方』からの抜粋です。



モーニング・グローリー
━めったに見られない黄金の雲

数年前の事、私(ギャヴィン氏)は暇に飽かして
 雲の本写真に見入っていた。
その時に見た事もない』に出くわした

13.02.16Mグローリー02

 その航空写真に写っていたのは、
とてつもなく長くて滑らかな円筒状低いで、
まるで白いメレンゲのかかった長いロールケーキ
前後に青い空広げて
地平線端から端まで伸びている様だった。

それが、蛇行する川マングローブの湿地
異国らしい匂いのあふれた風景の上に広がっている。

層積雲に見られる特殊な形
ロール雲」という事になるのだろうと
見てとったありふれた雲の一つに数えてしまうには
あまりにも壮麗だ。

13.02.16Mグローリー01

それもそのはず、写真添えられた解説によれば、
特別に「モーニング・グローリー」という名前が付けられていて、
この雲通過していくのを見ると感動胸がいっぱいになる
と言うのである。

雲ウォッチャー人生は、
眺める為あるのではない
私はその場で心に誓った

モーニング・グローリー見られる場所突き止めよう
そしてこの美しい雲この目で見よう、と。

13.02.16Mグローリー03

そのすぐ後に、この雲オーストラリアでも
とりわけ辺鄙な土地でしか発生しない書かれていた。
クィーンズランド州北部のガルフ・サバンナ地方

ただその雲だけ求めて
 地球の裏側まで行くだなんて
いかに熱烈な雲ウォッチャーでも粋狂にもほどがある
誓いを立てるのは少しばかり早過ぎたかもしれない

13.02.16Mグローリー11

ところが、知れば知るほどこの雲への興味膨らんだ
モーニング・グローリーは、なんと
イギリスの国土同じ1000キロもの長さ伸び、
最高時速約60キロ移動するらしい。

しかも、勇猛果敢グライダーマン達の小さなグループが、
毎年この雲との遭遇期待して
オーストラリア中から集まって来る言う。

 春9月から10月にかけて、
彼らはこの雲発生する
バークタウンという田舎町で待機する

13.02.16Mグローリー06

目的はただ一つ、この雲上昇気流を利用して
長時間滑空するのだ。

モーニング・グローリーでの「ソアリング(滑空)
グライダー乗りと言われ、
 その体験はまさに雲の波乗り形容するしかないと言う。

13.02.16グライダー02

 にわかにオーストラリア遠く感じられなくなった
オーストラリア人グライダー乗り達酒を酌み交わしながら
究極の雲頭上に押し寄せるのを待つ・・。

伝説の大波を追うサーファー達青春映画
ビッグウェンズデー』を、
オーストラリアの空に所を変えて実体験するのだ。

13.02.16ビッグウェンズデー01

旅支度をしながら、私はヴィクトリア時代
雲の研究に打ち込んだ
裕福な貴族ラルフ・アバークロンビー思い出していた

 気象学者呼び掛けて雲の会議招集し、
その情熱を1896年の『国際雲図帳』の誕生
結実させた人物だ。

13.02.16アバークロンビー01

1880年代後半の数年間、
アバークロンビー雲を求めて世界各地
 蒸気船鉄道馬車旅した

その旅の体験を記した
『さまざまな緯度における気象探究旅行記』は、
さながら気象学視点で書かれた
 『80日間世界一周』といっただ。

彼は世界各地違いがあるかどうかに関心をもち、
結局どこでも変わらないという
結論に達した。

13.02.16Mグローリー07

気象写真先駆者でもあり、
遠い異国で出会った記録した
そうした写真の多く
後にスウェーデン気象学者
H.ヒルデブランド=ヒルデブランドソン教授との共著
 1890年に出版した雲図帳』に使われ
この本前述国際版の元になったのだ。

 旅立つ時には耳にアバークロンビー氏著作一筋響いていた

13.02.16Mグローリー08

筆者のたっての願い熱帯低気圧遭遇する事だった。
海でもいい陸でもいい・・
 だが、ハリケーン季節狙ってモーリシャス訪れ
 台風との出会い期待してシナ海
端から端まで航海したにもかかわらず
望み叶わなかった。〉

モーニング・グローリー追う私のも、
同じ結末なるのではないだろうか
なにしろ大自然見せてくれる芸術作品の内でも、
底知れなさ極め付け

13.02.16グライダー01

見慣れたでさえ、いつどこに出現するか
確実予測するのは難しい

何人ものグライダー乗りがこの壮大な雲波乗りしよう
 オーストラリア大陸延々車を走らせて横断した揚句、
グライダー滑走路から
ついに浮かび上がる事のないまま
数週間後には帰路着いた聞く

バークタウンは、
オーストラリア北岸の広大なカーペンタリア湾
30キロ余り内陸入った所にある
アルバート川沿いの町である。

13.02.16バークタウン01

人口わずか178人。はるばる地球の裏側から
旅行者訪れるとは思えない場所だ。
300キロ程南のマウントアイザから乗った
 軽飛行機から見下ろすと
広漠たる闇にちらつくちっぽけなの集まりにすぎない。

「ああ、ここはまさに奥地だよ。」
 この町で軽飛行機チャーター便会社を経営する
ポール・プールが、飛行場から宿向かう車中で言う。
オーストラリア最後の未開拓地域だね。」
プールチャーター便は、カーペンタリア湾に散らばる
辺鄙な町々結んでいる

13.02.16Mグローリー09

町と町気が遠くなる程離れていて
間には荒涼としたサバンナ大地広がっている為、
飛行機唯一理にかなった移動手段だ。

殊に12月から2月までの雨季には平野全域
水浸しになり、町の内外の未舗装道通行不能になる為、
住民の足としてプール飛行機便だけが頼り

プールバークタウン数少ない宿の一つを営んでもいる
くたくたになって這う様ベッド向かう私に、教えてくれた。
その日の朝モーニング・グローリー通り過ぎたばかりだから
明日夜明け頃
現われる可能性非常に高い言うのだ。

13.02.16Mグローリー10

周期的発生するんだ」とプールは説明した。
あの雲現われる時は、たいてい何日か続けて
 日の出の前後やって来る
グライダー乗り4時半か5時起きて支度するんだよ。」
42時間がかりの旅の後だろうと
朝寝坊などもってのほかだった。

13.02.16Mグローリー05

翌朝、私はまだ暗い5時飛び起き
プールのジープ借りて町の北に広がる塩類平原行った

果てしない氾濫原真ん中立ち
白んでいく空見つめた
モーニング・グローリーはいつも北東の方角から
バークタウン近付いて来て
 遠い地平線上黒い線になって姿を現わす

しかし、坦々としたサバンナ上の雲ひとつない空には、
 朝焼けオレンジ薄紫広がるばかりだった



今日の「モーニング・グローリー」は、ここまで。
続き次回をお楽しみに。
写真はYahoo!検索でした。



朧雲』(おぼろぐも

空一面広がる灰色の雲高層雲
前兆とされる。この雲出ていると
太陽見えは「朧月夜」、は「花曇り」となる。
春の季語

━ 『雲の言葉』300語 より

雲の研究 25

今日は、積雲4回目です。
いつもの様にギャヴィン・プレイター=ピニー氏
『「」の楽しみ方』から抜粋します。



積雲
つづき 03

雲ウォッチング初心者
下層大気温度勾配
精通している訳はないし、
そもそもそんな事は誰も期待していない

13.01.28扁平雲01

だとすれば、積雲扁平雲巨大な雄大雲
発達するかしないかは
その時の成り行き次第に見える。

13.01.28積雲08

どちらもそんなつもりはなかったのに、
何気ない一言から本式の大ゲンカ
発展する恋人たち
いさかいみたいだ。
そうなるのは、二人の間ぴりぴりした空気
いつまでも消えない時、更に言うなら、
おしまいにする意思どちらにもない時だ。

13.01.28恋人たち02

そして、もし地表近くの空気
充分に湿気を含んでいたら
もし日射しが強くて大きいサーマルが発生したら、
もし雲よりも高い所にもっと暖かい空気の層がなくて
対流が止まらなかったら
その時おとなしい扁平雲豹変し、
並雲へと、
そして怒髪天を衝く様な雄大雲へと発達する。

13.01.28雄大雲02

積雲発達止めるものには
気象学者の言う「温度逆転層」がある。
これは高度が高いほど温度が高くなる空気の層の事で、
鉛直方向伸びようとする雲
この層ぶつかるとそこで止まる

積雲上の大気たまたまそういう状態なっていたら
暖かい対流はもはや周囲の空気より
暖かくも軽くもなくなる
それでは上へと発達できない
そこで頭打ち

13.01.28雄大雲03

積雲横に広がらざるを得ず
綿の様な肩お隣さん寄せ合ってくっつき
むくむくした層になって空を覆う

さてどちらがいいだろう?
ぶつくさ文句を言い合っていた恋人たち
いきなり大ゲンカを始め雨降って地固まるのと
だんまりを決め込んでぴりぴりしたまま
行き詰ってしまうのと・・。

13.01.28恋人たち01

どっちどっちだが、痴話ゲンカネタにする
テレビのバラエティ番組好きな人なら知っている様に、
突然ケンカの勃発見ている分には面白い

積雲はそそり立つ巨大な雄大積雲なった後
それで発達おしまいにするとは限らない
条件さえ揃えば雄大積雲更に発達し続ける

13.01.28雄大雲01

低い雲底から12,000m以上高さに伸び
熱帯地域では18,000m近くにもなるだろう。
あたりはぐんぐん暗くなり
おどろおどろしい様相見せ始め
もはや積雲とは呼べなくなっている

13.01.28積乱雲01

ここまで発達した積乱雲だ。
恋人いざこざ
とうとう手に負えない大ゲンカ発展し、
番組司会者割って入って
なだめてやらなくてはならなくなるのだ



積雲はこれでおしまいです。
写真にはいつもの様にYahoo!検索を使用しました。

次回は、お正月のNHKの再放送番組で「」を取り扱っていた
モーニング・グローリー』についてお話しします。
ご覧になった方あるかもしれません。

もちろん、ギャヴィン氏大変興味を持っていて
これについてなんと28ページにも渡る文章書いています
お楽しみに



雲入』(くもいり

蹴鞠高く高く蹴上げること
記録が雲入りした!というように使ってみたい言葉
━『雲の言葉300語より

雲の研究 24

今日は積雲第3回目です。
いつもの様にギャヴィン・プレイター=ピニー氏
『「の楽しみ方』からの抜粋です。



積雲
つづき 02

私達は子供の頃仰ぎ見た
━つまり、下から見上げるという動作をした━ものだが、
子供にとっては一番近いものではなかっただろうか
だからきっと私達は大人になると
今度は慕って見上げるのだ

13.01.06積雲01

もちろん、雨が降ったり日が照ったりするからでもある
人知及ばない天侯
人間生死かかっているのだ。
理由はどうあれ、私達は求めて見上げ
とを結び付けてきた

13.01.06飛行機01

飛行機飛べる様になった今日、
の上にがいないと分かってしまったのは
寂しい限りではないか

19世紀の中頃には、気球による
比較的手頃なものになり人間
高さまで近付く事が出来る様になった。

ヴィクトリア時代批評家文筆家
ジョン・ラスキンは次の様に書いている。

中世の人々は、天使載せる以外には
描かなかったが・・・
今の我々でない物
隠れているとは思っていない

13.01.06気球02

気球実現してから200年の間
上昇動力源として最よく使われたのは
空気よりも軽い水素だった。

しかし、この様な可燃性高い気体
使用するのは危険だった上、
当時高度制御思うに任せなかった為、
1960年代までは気球内部の空気暖めて
上昇するのが一般的な方法だった。

13.01.06気球01

気球の中の空気膨張し、
周囲空気よりも密度小さくなって
上昇するという仕組み
晴れた日サーマル上昇とまさに同じ原理だ。

そういえば、焼畑山火立ち昇る
その上空にも積雲が出来る。
炎の熱空気暖めてサーマル発生させ、
水蒸気上空運ぶからだ

ところで、サーマルに「水蒸気」が含まれているというのは
どういう事だろうか。
又、目に見えない水蒸気
目に見える積雲水滴にドロンと化けるのは
どうしてだろう?

13.01.06積雲03

これは寒い日白く見える事思い出せば
たいして不思議ではないだろう

私(ギャヴィン氏)は幼い頃冷え込む朝
よく連れられて
近所の公園栃の木の実拾いに行った
吐くと真っ白くなるのが
子供心不思議でたまらなかった。

の様な白い息ミトン払い
と2人して面白がったものだが
私の作った違って
すぐにかき消えてしまうのでがっかりもした。

まで戻る道すがら、指紋ならぬ
息紋」が出来ないかと思ったものだ
私の息空気の中に
すっと溶け込んで消えてしまった
正真正銘だった。

13.01.06積雲02

きさ出来る高さにすれば、
積雲違うところ一つもない

吐く息は常に水蒸気含んでいる
汚染物質入らないように
湿った気管支食い止めるという
身体仕組みそうなるのだ

暖かい呼気重さの少なくとも4%水の分子で、
この水分子はあらゆるもの、
例えば空気の成分である酸素窒素
その他の分子衝突する。

このように分子一つ一つ
バラバラ飛びまわっている状態の時の気体で、
水蒸気」と呼ばれる

13.01.06積雲06

個々の分子小さくて見えない為
空気どれだけ水蒸気含んでいようと
透明だ。

この水分子結合してになると、
ようやく私達の目にも見えるようになる
寒い日吐いた息白くなるのは
それが起こるからだ

暖かく湿った呼気は、
冷たい空気混ざるとたちまち水滴になる。
気体冷えると分子の動き遅くなる
呼気水分子そうなると
結合しやすくなるのだ

13.01.06積雲04

同じように地面から立ち昇るサーマル
水蒸気運び
上空気温低ければ、そこで水分子冷えて
動き遅くなり結合する。

その一部無数微小水滴になって
積雲形成するのである。

13.01.07積雲03

対流によって内部逆巻いている積雲は、
何をしでかすかわからない気まぐれなだ。

地上から見た内部動き
ゆっくりどころかのったりしているが、
遠くの物体動き
遅く見えるものだという事を思い出そう
上空高く飛ぶ飛行機カタツムリの様だ)。

実際には、内部乱気流
活発活動している。
そして、ひとたび発達し始める
晴天浮かぶおとなしい扁平雲
数時間巨大な雄大雲姿変え
その黒い雲底突然激しい警戒する。

13.01.07扁平雲02

扁平雲どうやってそこまで発達するのだろうか
これは雲ウォッチャーがきまってつぶやく疑問だ。
地上発生したサーマルに乗って生まれた積雲
吹かれてかき消されるなら
低い空漂うにはよくある)、
何故内部空気高く高く上昇し続け、
入道の様な大雲作るのだろう

サーマル乗り捨てられたは、
何が上昇なるのだろう
せっかくのラーバランプ喩え
ここでは役に立たない

13.01.07扁平雲01

オイル電球から離れて
上昇するにつれて冷え
まもなく収縮して再び沈む

何故発達する積雲内部空気
同じ事ならないのだろうか

それは「潜熱」というもののお陰だ。
物理っぽいになって来たからと言って、
ここは一つ毛嫌いせずに聞いて欲しい

13.01.07積雲05

晴天ぽっかり浮かぶ積雲
気ままいたずらな振る舞い理解するには、
ここが肝心な所なのだ。

コンスタブルのぴりりと厳しい言葉思い出そう
理解してこそ見えてくる」。
輝かしい景色はもちろん誰にでも味わえる
雲ウォッチャーなら動きについて
理解深めて欲しい

それでこそ雲の美しさ
奥深くまで見えてくる私は思うのだ

13.01.07積雲06

凝結の時の潜熱、すなわち凝結熱とは、
自由飛び回っていた水分子結合して
液体なる時放出するの事だ。

上昇するサーマルてっぺん
積雲形成される時もこの発生する。
水蒸気凝結して液体になり、
周囲放出するのだ。

この原理逆の状態考える
もっと理解しやすいだろう

13.01.07積雲08

液体の状態蒸発して
水蒸気になる時に周囲から奪う

こちらのほうが多少でもわかり易いなら
午後に私がジョギングして
かいているところを
想像してみよう。
(ただし、あくまでも架空の汗
架空の風架空の夏の午後だ。
本当の私ジョギングしない)。

13.01.06ジョギング02

吹かれて蒸発し、
その時に水分子奪っていくので
私の少し涼しくなる
(お陰で私はオーバーヒートせずに済む)。

その水分子が私の走っている地面上に出来た
サーマルさらわれていくのは、
取り立てて不思議な話ではないだろう

そして、くるくるうねる対流共に上昇し、
昇るにつれて冷える事も
すんなり理解出来るはずだ

13.01.06ジョギング01

水分子ある程度高さまで上昇する
そこでまた結合する
水滴になるのだ

から蒸発する時に奪っていったは、
水分子凝結してになる時再び放出される。
この科学用語でいう潜熱で、
これが小さい積雲大きい積雲
発達させる立役者なのだ。

13.01.07積雲01

水滴出来て潜熱放出される時、
周囲空気ほんの少し暖まる
すると空気膨張して軽くなり
エネルギーチャージされて上昇する。

つまり鉛直方向発達させるのは、
積雲内部放出された潜熱なのだ。
潜熱空気を更に上昇させ
だから積雲雲頂ぷっくり膨らんでいる

こうして積雲まるで自分の力
積み重なる様にして扁平雲から並雲へ、
そして雄大雲へと大きくなる

13.01.07積雲09

そして、雄大雲含んでいる水分
として再び地上戻す
その時まだその雲の下で
ジョギングしているかもしれない

そうしたら、元は私の汗だった水分子
雨になって私の額又濡らすかも知れない

かいた汗巡り巡って
わが身降りかかるのが空しくて
私はジョギングしないのだ



本日は、ここまでと致しましょう。
積雲つづき楽しみに
今日の写真もYahoo!検索調べたものです

さて、「『雲の言葉300語」から・・・

お天気雲
があれば必ず雨・・・ではない
青い空ぽかり浮かぶ雨を降らせない積雲こう呼ぶ
晴天積雲」とも。

雲の研究 23

今日積雲第2回目です。
いつもの様にギャヴィン・プレイター=ピニー氏
『「」の楽しみ方』からの抜粋です。



積雲
つづき 01

では、積雲とは正確に言うとどんなものなのだろうか。
正体ただの水だと聞かされても、
納得できないだろう
それでもと名のつくものはみな出来ていて
だから積雲それ以上でもそれ以下でもない

12.10.25積雲07

すると向学心旺盛な雲ウォッチャーは、
何故地上で見るコップの水と 
こんなにも違うのか思うにちがいない

 雲真っ白不透明に見えるのは、
でも直径数千分の一ミリという細かい水滴
無数集まっている為だ
1立方メートルあたり100億個)。
この無数微小な水滴表面
 太陽あらゆる方向散乱させる為、
コップの水表面比べて
 雲はぼんやりした乳白色に見えるのである。

 つるつる板ガラスざらざら曇りガラス
違い似ている
 曇りガラスは、細かい凹凸
ざらざらした表面様々な方向反射するから
白く見えるのだ

12.10.25積雲10

古代ヒンドゥー教及び仏教説話によると、
 積雲霊的な親戚であり、
その為インドでは、焼けるような暑さ後に
もたらしてくれるものとして崇拝されている。

古代ヒンドゥー語表わすメガ」という言葉は、
信徒の間で呼び掛ける名前として使われている。
又、サンスクリット創造神話では、
始まり創られた白象
飛び
姿形自在変えたり
 雨降らせたりするがあったと言う。

12.10.25アルビノの白象01

現在はこの様な霊力失ってしまったが、
そんなスーパーエレファント子孫
特に色素足りないアルビノの白象
今日も関連付けられている

積雲の中でも中くらい大きさの並雲は、
水滴重さ合計すると
 象80頭分相当すると言ったら、
いささかぎょっとするだろう

積雲水滴微細だが、
なにしろ途轍もない量が集まっているからだ。
今時の象はもう飛ばないのに
象80頭同じ重さ
どうやって積雲になるのだろう。

12.10.25積雲02

そのヒント晴れた日現われやすいという
積雲特徴にある。
 太陽照っているには、
その暖められ
サーマル又は対流呼ばれる気流発生する。

この上昇する空気は、
 飛行機の中を通過する時
軽い気流として感じられる。

ハンググライダー積雲目指すのはこの為だ。
 積雲機体又はの体押し上げる上昇気流
発生場所教えてくれる標識だと知っているのである
サーマル積雲生命吹き込む
見えないだ。

 積雲生みその中流れ活動させる。
サーマル水蒸気上昇させ、
水滴10分ほど空中浮かばせる
それが積雲一生なのである。

12.10.25ラーヴァランプ01

これはラーバランプ動きによく似ている
ランプオイル小さい玉
 ゆっくりと浮いたり沈んだりする
あのラーバランプだ。

ランプ本体色付きの水
オイル混合物入っていて
晴れた日上昇気流同じしくみ上昇する

ランプ場合気体ではなく液体だが、
原理同じだ
オイルよりもほんの少し密度高く
その為普通はランプ沈んでいる
 電球点灯するとその暖められ
膨張して密度低くなる

すると水の中ゆらゆらゆっくり浮かんでいく
屋外空気もこれと同じふるまいをする
 太陽暖められた地面
ランプ電球同じ働きをし
地面上の空気暖める

12.10.25積雲06

暖まった空気膨張して軽くなり
周りの温度の低い空気の中浮かんでいく
上昇するサーマル乗って
目に見えない水蒸気上空運ばれ
それが積雲になる。

アメリカ詩人マリア・ホワイト・ロウエル言葉で言えば、
 「青い草地放された小さなやさしい羊・・・
白い毛刈られたばかりの」だ。

12.10.25ヒツジ01

忘れてならないのは
積雲一つ一つ独立したで、
空一面覆うではない事だ。
地面一部が他よりも多くの熱
吸収して放出する為に、
あちらよりこちらの方が、対流による空気上昇
生じやすいという事が起こる。

 例えば、アスファルト道路草地より
効率的空気暖める
日のあたる丘の斜面になった斜面より
空気速く暖める
 又、晴れた日小島周りを巡れば
この現象がはっきりと観察出来る

雲ウォッチャーなら嬉しくなるはず
地面周囲の海よりも容易に太陽熱放射暖まり
サーマルによるふわふわした白い雲
上空浮かぶのが見えるのだ
 南太平洋住む人々
積雲航路標識代わり利用し、
見えて来ない内から
 環礁うまく航行する。

12.10.25白髪かつら01

積雲上昇気流上に出来る為一つ一つ独立している。
そこが他の雲との見た目違いだ
高くそびえる透明な空気の柱先端
白く見える様になったものなのである
 見えない巨人被った白髪のかつらのようだ

そして、積雲はまもなく生みの親サーマル離れる
頭からむしり取られたかつら
 くるりくるりゆっくり漂いながら崩れていく

12.11.13積雲01

 雲ウォッチャー初心者積雲こんなに
素敵思えるのは
もちろん晴天の雲だからというのもあるが、
見るからに気持ち良さそうだからだ

見上げふんわりした白い綿雲うずもれて
 眠ってみたい思った事のない人いるだろうか
の為にしつらえられた家具の様ではないか。

だからこそ、昔から宗教画聖人の椅子として
描かれてきた違いない。
西洋絵画において、中世までは
 神から伸びた手雲間から覗く目
表現されるのみだった
ルネサンス初期からは
台座として宗教画によく使われるようになった

12.11.13積雲07

少し前の事、(ギャヴィン氏)
7か月ほどローマ滞在した。
雲一つない日が多かったが
それに反して地上雲だらけである事に間もなく気づいた

驚いた事に、通りの角という角建つ
 バロック教会では、内壁フレスコ画
むくむくとした白い積雲御座描かれ
12使徒聖人がそこに座って
礼拝訪れた人々見下ろしているのだ

サンタ・マリア・デッラ・ヴィットーリア教会
コルナーロ礼拝堂

ジャン・ロレンツォ・ベルニーニによる有名な彫刻
聖テレジアの法悦』は、
聖女テレジアトラバーチン大理石削った
積雲倒れ込もうとするところだ

12.11.13積雲12

100年前からヴァチカン美術館を飾る
ラファエロティツィアーノルネサンス絵画では、
聖母マリア幼子イエス腕に抱いている
天に昇って行くところだが
必ずたっぷりした白い霞の台の上に支えられている

古代ローマ遺跡フォロ・ロマーノ隣接する
サンティ・コズマ・エ・ダミーノ聖堂
6世紀モザイク画は、
長い衣を着けたキリスト
 夕日の赤オレンジ染まった雲の絨毯の上に立っている

天と地の間にあって、
聖なるもの分ける申し分のない宗教シンボルだった。
画家彫刻家もやもやとした水粒
調度品配する事で、
同じ図像の中に一緒に描く出来た

 キリスト教絵画描いた多くの芸術家たちにとって
たっぷりとした穢れない積雲は、
純潔神々しいもの死すべき運命背負った
罪深いものから隔てる道具だったのだ。

12.11.13積雲06

キリスト教手に手を取って歩んできた
 聖書にもそれを示す記述数多く見出せる

 「出エジプト記」では、シナイ山雲の中降り
の姿をたちどころに隠したり現わしたりした
雲の柱主の栄光の雲━をもって
イスラエルの民導き砂漠を渡り
宿営の時間になると止まり、又出発の時立ちあがった

12.11.13積雲04

使徒言行録」では、
イエス復活した後覆われて天に昇る
又、新約聖書外典には、聖母マリア
臨終の床に集まった使徒見守られながら
乗って天に召される場面を
描写したものがある。

ダニエル書」によれば、
 神白い雲乗ってやってくるという
関係性見られるのは
キリスト教ユダヤ教限った話ではない

12.11.13積雲13

イスラム秘教でも、アッラー
その存在現わす前雲の状態だったとされている。
日本雷神は1274年の元冦(文永の役)の時に
の上に座り
 モンゴル軍大船団向かって矢の様放って国を救った

西遊記』の孫悟空三蔵法師
西天取経随行し、觔斗雲乗って
一瞬にして遠くへ移動した。

12.11.13積雲05

雲伝説はまだ尽きない
 雨雲という意味のパルジャニヤ古代インド雨の神で、
 肥沃な大地結婚し、牡牛姿をしていたという。
バルト海地方ペルコンスは、
豊穣をつかさどる雷神だ。

ケニヤとタンザニアマサイ族創造神ンガイは、
 怒っている時には赤い雲に、
 機嫌の良い時には黒い雲になって現われる
オーストラリアアボリジニの神ウォンジナは、
夢幻時洞窟降りてきた精霊で、
その一人上がって天の川になった・・・
まだいくらでもあるが、
大体のところはお分かり頂けた思う



今日このくらいにしておきましょう。
写真イラストはすべてYahoo!検索で調べました。

雲鬢(うんびん)
女性たとえた美称。転じて女性
━「『言葉300語」より━

雲の研究 22

今日は、積雲第一回目です。
いつもの様にギャヴィン・プレイター=ピニー氏
『「」の楽しみ方 』からの抜粋です。



積雲
うららかなにぽっかり浮かぶ綿雲


12.10.25ダヴィンチ01

レオナルド・ダ・ヴィンチ
表面のない物体」と表現したが、
なるほど、言わんとするところはよく分かる

 雲似ておぼろげ儚い
見えるのにどこが始まりでどこが終わりなのか
捉えどころがない
まさに雲をつかむようだ

12.10.25カリフラワー01

ところが、積雲ダ・ヴィンチこの言葉そぐわない
もくもくと盛り上がった姿真っ白いカリフラワーみたいで、
他のタイプの雲よりもかっちりと固そうだ

私(ギャヴィン氏)は子供の頃綿この雲
長い梯子掛けて取って来るものだ信じていた
 手伸ばせば届きそうだ
そしてもし本当に届いたならこの上なく柔かいだろう
はっきりした一番お馴染みのこのは、
雲ウォッチング入門ちょうどよい

12.10.25積雲01

積雲という名は、積み重なる様
むくむく膨らんだ様子指している
分類関心のある人たちは
積雲扁平雲並雲雄大雲分ける
 これらが積雲の「」だ。
扁平雲最も小さく高さよりも幅の方が長い
並雲高さと同じくらいで
雄大雲更に高さがある

 晴れた朝上空小さい積雲出来る
生まれたての扁平雲
扁平雲もその兄弟の並雲降らせないので
別名で「晴天積雲」とか、「お天気雲」という。

12.10.25積雲09

というと悪天しか連想しない人たちに
 お気の毒さまVサインしてみせるふわふわの二本指だ。
 綿菓子のような白い雲ぽっかり浮かんだ
うららかな午後のは、
一点の雲もないのっぺらぼうのよりもはるかに美しい

 太陽
独裁崇めるファシスト洗脳されてはならない
お天気雲積雲素晴らしい夏の日主役なのだ。

積雲にはもう一つある。断片雲だ。
この雲あまりふわふわしていない
輪郭くっきりせずぼやけている
出来て10分程年老いた積雲崩れてこうなる

12.10.25積雲11

分類上の「」にあたる10種雲形には、
とは別に数多くの変種」がある。

これらは雲形見た目の特徴によって分類したもので、
積雲にはこの変種一つ放射状雲しかない
 いくつもの雲吹く方向に平行並んだものだ
ふわふわした綿雲帯の様に並ぶ様子は、
雲の道呼ばれる

12.10.25積雲12

積雲よい天気連想させるが、
というものはどんなものも条件次第
降らせる発達する
積雲例外ではない

おとなしい扁平雲が、時と場合によっては
いきり立つ高々とした雄大雲になる。
この雄大雲晴天積雲変わりはないのだが
 巨大な雷雲積乱雲発達する途中で
中程度から強い雨降らせる事があるのだ。

積雲扁平雲から雄大雲へ、
更にそれ以上の雲へと発達するのは、
 高温多湿熱帯地域ではよくある事だが、
温帯地域ではさほどでもない

それでも昼間積雲上へ上へと伸びて
雄大雲になるのが見えたなら
 午後には大雨降る恐れがある
雲ウォッチャーよ、警戒せよ!
マウンテン(山)は、
午後ファウンテン(噴水)なのだ。

12.10.25積雲05

一目わかる積雲独特な見れば
 子供たちこの雲描かれる訳察しがつくだろう
6才の子供お絵描きするぽっかりと 
積雲浮かべなくては気が済まない

 子供大好きだ
 卵から孵ったひよこ最初に目にした物
 家族感じる様に、
人間子供赤ん坊の頃乳母車乗せられて
ぐるぐる連れ廻されながら、ずっと見上げていたせいで
との結びつき深まるのではないだろうか
きっとそうだ

 子供なんて、から生えているわ
からはみ出ているわメチャクチャなのに、
小さい子供でも積雲基本的な形
しっかり把握出来ているようだ

他の雲よりも簡単に描けるというのも確かにあるが
 小学生必ず積雲見られるのは
それよりもっと根源的な理由のせいだ。

12.10.25BBCくもりマーク01

それに積雲雲の中一番の基本の形という感じがする
といって思い浮かぶのはこの形だろうし、
そうであればこそ、1975年に22才のグラフィックデザイナー
 マーク・アレンBBC天気予報用に考案したマーク
むくむくこの雲だった。

 当時の曇りマークマグネット付ゴム製で、
 テレビ局お天気アナそれ
 イギリス地図上にバシッとくっつけた

アナウンサーカメラの方を向いた隙に、
そいつが言う事を聞かずにポロリ落ちるので
 その度に私を含む全イギリス国民フフン笑ったものだ

12.10.25積雲08

積雲30年に渡って曇りのマークとして使われたが
 2005年BBC天気図は装い新たに3Dシステムになり、
分布変化する様子
リアルタイム表示されるようになった。

この新システムによって覆われた地域
ぐんと正確に表わされるようになった
 コンピューターによる地図の上をカメラ
ぐるぐる動いたりズームしたりすると
気持ち悪くなると視聴者不評買った

でもそれは多分表向き言い訳で、
私と同じ様に親しみ易い積雲マーク
お別れしたのが寂しかったのだろう

 雲ウォッチング持て余している時
もってこい遊びだが
どんな人にも楽しむが出来る。

自然誰にも分け隔てなくその姿
見せてくれるのがなのだ。
どこからでも良く見えるから場所選ばない

12.10.25積雲03

もちろん小高い所へ行けばなおいいが、
自然満喫出来る美しい山行かなくても
 高層ビルそれに劣らず雲ウォッチング適している
それよりも重要なのは雲ウォッチングをしている時の心の持ち様だ。

雲ウォッチャー鉄ちゃんとは違う
いろいろな「」を見分けてやろうと
 鉄道ファンよろしくノートとペンを手にして丘の上待ち構えても
がっかりするのがオチだろう。
車両番号ならぬ雲番号書き留めようとしても
もちろん無駄なのだ。

雲ウォッチャーカタログ作りしない
変種をせっせと仕分けする仕事は、
気象学者私達に代わってやってくれる
彼らそれ仕事というが、
私達の雲ウォッチングはもっと優雅思索的な楽しみだ

物象深い理解と、精神世界探求誘うものなのである
描かせたらおそらくイギリス一の画家ジョン・コンスタブルは、
風景画の「基調」および「情緒を表わす手段」と見なしていた

12.10.25コンスタブル01
(コンスタブルの作品)

コンスタブル描いた雲の景色には、
 その下に広がる牧歌的な風景欠けている
ドラマ活力感じられる

コンスタブルは「理解してこそ見えてくる」と信じていた
その意見賛成だ。
 雲どうやって出来るのか何故あんな姿をしているのか、
どうして姿を変化させるのか、どのように形成され、
発達するのか、どのように崩れて消えていくのか
そうした事分かれば雲ウォッチャー
単に気象原理留まらず、もっと多くを知る事出来る

 17世紀フランス哲学者ルネ・デカルト
次の様に書いている
見るには顔を上げて天を仰がなくてはならない為、
は・・・神の御座だと考えられている
・・・だから、もしその性質解明出来れば
地球素晴らしい事象すべてについて
その原因をなんらかの形で明かす事出来る考えていいだろう。」



今日ここまで
今回も写真はすべてYahoo!検索調べたものです
途中、ギャヴィン氏が「・・・もっと優雅思索的な楽しみだ。」と
雲ウォッチングについて書かれたところが印象的でした。

からしゃべるのない
種田山頭火

━「『雲の言葉』300語」より━

雲の研究 21

層積雲第四回目です。
いつものようにギャヴィン・プレイター=ピニー氏
『「」の楽しみ方』 からの抜粋です。


層積雲
(つづき 03)

層積雲形成されるのは、
 積雲温度逆転層の下に広がった時ばかりではない。
もう一つ、安定してのっぺりした層雲からも
層積雲発達する場合がある。
ぼうっとしたおとなしい雲の層集まってになるのだ。

12.10.16層積雲01

低く垂れこめた覆いの様な層雲が、
どうするとむくむくしたこぶ状の雲になるのだろう?
まず、雲の周囲立ち
 乱気流生じるのが一つ
 もう一つは薄い層雲から日の光射し込み
地表からサーマル(上昇気流)が緩やかに上昇して
かき混ぜた時だ。

しかし、がほとんどなく
 雲厚くてサーマル発生させなくても
層雲固まって層積雲になる。
この場合層雲から層積雲への変身は、
吸収して放出する事による
温度逆転によるメカニズム同様
雲ウォッチャーならこれも知っておいた方がいい
層積雲だけでなく形成全般にかかわる重要な働きなのだ。

12.10.16層積雲02

移動には四通りの形態があり、
そのすべてが雲の形成関係している。
対流」は、暖かい空気上昇して運ぶものだ

ラーバランプの例は液体だが、
気体場合同じ様に、液体動く事移動する
伝導」は、接触して移動するが
物体沿って伝わる事を言う。

12.10.16層積雲03

暖かい部分分子運動が非常に活発になって
冷たい部分分子揺らし
全体が同じ速度振動するようになる為だ。

 手の中雪玉溶ける時これが見られる
又、前日がよく晴れていると
翌朝放射冷却発生しやすいのも移動による。
 更に、をかいて冷える時起こるのが気化」で、
汗の水分蒸発して気体になる時に皮膚奪っていく

水滴最初に出来る時
空気が少し暖まるのも同じ事だ。
 カリフラワー状積雲の中では、
水滴出来る時放出された空気膨張し、
その浮力で更に空気上昇する。

12.10.16層積雲06

何だか物理の授業の様になって来たが、
授業サボろうだなんて料簡間違いだ
雲ウォッチャーはバイク置き場から戻って来て
少しの間「放射の話聞いた方がいい
何と言っても四つの内でこれが一番重要なのだ。

層雲層積雲変身させる働きをするからではなく
放射がなければ地球寒過ぎて 
生き物生命育む事出来ないからである

真空宇宙から太陽地球届くのは
放射おかげなのだ。
 放射は「電磁波」の形をとる為、
後の三つの熱伝導とは性質が大きく異なる

12.10.16層積雲04

 太陽から放射される電磁エネルギー
可視光として私達の目に見えるのは
電磁スペクトルのごく狭い範囲にすぎない。
にもかかわらず太陽放射するエネルギーのおよそ45%占めている

9%それより短い波長
目に見えないが日焼けの原因になる「紫外線」━
残りの46%は「赤外線」と呼ばれる長い波長で、
この赤外線目に見えないが暖かく感じる。

物質すべて電磁波放射していて、
物質熱いほど
それが最も強く放射している電磁波波長が短い
(だから物質熱くなる時は、最初は赤く次に黄色く更に青くなる)。
 太陽よりもずっと冷たい地球最も強く放射しているのは、
波長の長い目に見えない赤外線だ。

12.10.16層積雲09

 電磁エネルギー放射する一方で
すべての物質特定の波長電磁波吸収している
個々の物質どの波長どれだけ吸収するか
その物質構成する原子もしくは分子種類決まる

雲粒波長の長い赤外線より多く吸収し
波長の短い可視光紫外線ほとんど跳ね返してしまう
だから覆うと昼間寒く 
太陽放射する波長の短い電磁波反射するので暖まらない)、
 夜暖かくなるのだ
地球放射する波長の長い赤外線吸収し、一部放出して返す)。

12.10.16層積雲12

前置き長くなったが、いよいよここで本題入ろう
サーマル影響がなくても
平べったい層雲がむくむくした層積雲変わるのは何故だろうか

層雲雲頂冷え雲底暖まる
 雲の層上部は太陽上から放射する短い波長電磁波
ほとんど吸収せずに跳ね返してしまうが、
下部地球下から放射する波長の長い電磁波をたっぷり吸収する

12.10.16層積雲10

暖かく冷たいというのは
どんな雲であれ不安定状態だ。
暖かい空気膨張し
密度の高い冷たい空気突き抜けて上昇しようとするからだ

暖かい空気一部上昇するにつれて
安定していたおとなしい層雲上昇気流発達させ始め
これが雲の層掻き回す為に
厚い部分薄い部分出来る

こうして層雲層積雲なるのだ。
ほら、たいして難しくないでしょう?

12.10.16ガリバー03

ジョナサン・スウィフトによる18世紀風刺小説ガリヴァー旅行記』で、
レミュエル・ガリヴァー奇想天外な国々訪れるが
中でもリリパット国は壮大な考えを持つ小人の国という事で有名だ。
しかし雲ウォッチャーからすると
スウィフト創り出した勇敢な旅行者遭遇した
別の国住民がとりわけ気になる

12.10.16ガリバー02

ラピュタという到着した時
ガリヴァーはその雲の上
浮かんでいるのを見てびっくりした

基底部岩石層彫り込まれた
巨大な磁石働き浮かんでいるのだ
ラピュタ住民はこの磁石向きを変えて浮かぶ島操縦し
王国領土動き回る
ラピュタ住民風変わりやつらだった。

彼らの頭傾いでいて
片方の目内側向き
もう片方の目天空見上げているのだ
 上着太陽模様飾られていた

12.10.16ラピュタ01

雲の上住むラピュタ国民は、
いくらか注意散漫な人種だった。
 心数学音楽の事でいっぱいで、
いつもうわの空なのだ。

ガリヴァーラピュタ人について最初に気付いたのは
お供付いていて主人記憶呼び起させる事だった。
お供小石袋に入れて
短い棒くくり付けた物をいつも携帯し
誰かに呼び止められる主人耳元を、
 返答必要な時口元それで殴るのだ

12.10.16ラピュタ02

なにしろこの人たちはいつも深い思索没頭しているので、
 話す器官聴く器官外から刺激して 
気付かせてもらわないと
口をきく事も、人の話に耳を傾ける事出来ないらしい

ガリヴァーは、この奇人たち親しむ事なかった
 数学音楽才能には脱帽したが
彼ら自分だけの世界没頭していたので、
ガリヴァー入り込む隙なかったのだ。

12.10.16層積雲11

雲ウォッチャー天空移りゆく風景見つめて
羽ばたかせているも、
ラピュタ人みたいに雲の中突っ込んで
 空想ふけっていると人に言われるだろう

気にしなくていい
そのとおり、空想ふけっているのだから
そのどこが悪いものか



これで、層積雲終わりです
今回の写真はすべてYAHOO!検索調べたものです
ラピュタ関してはスタジオ・ジブリにもお世話になりました
次回からは積雲お送りします

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