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層雲の第三回目です。
(3/24の続きとなります)
いつもの様に、ギャヴィン・プレイター=ピニー氏の
『「雲」の楽しみ方』からの抜粋です。
層雲
(つづき 02)
地表近くに漂う雲はどんな時に霧と呼ばれ、
どんな時に靄と呼ばれるのだろうか。
公式には視程で区別される。
つまり、どれくらいまで先を見通せるか、だ。
a
気象観測では、視程が1キロ以下なら霧、
1キロ以上なら靄という。(層雲もないのに
1キロ先が見通せなかったら、それはただの近眼だ)
霧と靄は微小水滴の大きさと密度の点でも異なる。
水滴のできるメカニズムを説明するのに、
ここでは霧(霧粒)の話をしよう。
霧には主に移流霧と放射霧があり、
この二つは成因が異なる。
1979年のジョン・カーペンター監督による
ホラー映画『ザ・フォッグ(霧)』で、港町アントニオ・ベイに
不気味なスピードで迫ってきたのは移流霧だ。
層雲を主人公にした映画はこれしか
私(ギャヴィン氏)は知らないので、
この映画が傑作映画と言い難いのは残念だ。
それでも、移流の作用で発生する
霧のあらましを知るには、手頃な材料になるだろう。
アントニオ・ベイの誕生百年祭の前夜、
真夜中にこの小さい港町が海から広がってきた濃霧に包まれる。
住民がとりわけ恐れたのは、霧に隠れている「恐ろしい悪魔」だ。
その正体は町の創立者たちに追い払われて
海に帰された難破船の乗組員だった。
濃霧の中で見殺しにされた水夫たちは、
体の溶けかかったゾンビとなって復讐しに来たのだ。
予告編ではかすれ声のナレーションがこう囁く。
「ドアをお閉めなさい。窓に鍵をお掛けなさい。
霧の中に何かがいる・・・」
a
霧のゾンビが迫ってくる時にアントニオ・ベイの住民たちが目にしたとおり、
移流霧の成因は気流だ。
水蒸気を含んだ空気が冷たい海面や地面の上を流れて発生する。
春から初夏にかけては、
暖かい海上で湿気をたっぷりと吸った空気が冷たい海上に流れて
霧粒を作り、移流霧になる。
移流霧は主に海の上で発生する事から、またの名を「海霧」という。
放射霧はその逆に、海上では発生しない。
もっぱら陸上で、しかも穏やかに晴れた風の弱い夜に発生する。
地面が熱を放出して冷え(放射冷却)、
そこに接している空気も冷えるのが成因だ。
空気の大きな移動は必要ないが、
ゆるゆると動く事で下層の空気に冷却が広がり、深い霧になる。
地表近くに生じるこの雲は、上空の雲がない時に現われやすい。
放射霧は雲界の一匹狼なのだ。
上空に雲が出ている時はそれが覆いの役割を果たし、
地面が放出した熱をいくらかはね返して、
夜間に地面の温度が大きく下がるのを妨げる。
雲の覆いがない晴れた晩は地面が急速に冷え、
空気中の水蒸気が凝結して霧になるのに理想的な状態を作り出すのだ。
夜の長い秋と冬は特に放射霧が発生しやすい。
風が強くなると、乾いた空気と混ざって霧の層が散らされ、
放射霧は晴れる。
しかし、秋と冬の風のない穏やかな朝は、
太陽が昇って地面が暖まってくると霧の層が少しずつ上に浮かんでいく。
水分子は空気からエネルギーを得て、
霧粒と結合するよりも先に霧粒から離れる。
霧粒は蒸発して水蒸気に、
すなわち分子として飛び回っている目に見えない水に戻るのだ。
とりわけ濃い霧がこの様にして浮かび上がると、
低いながらも空を覆う層雲になる。
霧の層が薄ければ、地面に近い中空にしばらくとどまる事がある。
a
移動霧と放射霧は最もよく見られる霧だが、
霧はこの2種類だけではない。
蒸気霧は、暖かい水面上に冷たい空気が流れ(放射霧と逆)、
水面からの水蒸気が急速に冷やされて霧になったものだ。
煙の様に立ち昇る水滴は、蒸発作用が目に見えるようになったものである。
水は海面から水蒸気として常に上昇しているが、
普段は目に見えない。
極地方で見られる蒸気霧は最も印象的で、
「北極海煙」の名で知られている。
滑昇霧は、空気が山腹に沿って上昇する時に、
気圧がさがる事で空気塊の温度が低下する(断熱冷却)為に発生する。
谷霧は山頂で夜間に空気が冷やされて重くなり、
谷に流れ下りてたまったものだ。
霧氷霧は気温がごく低い為に霧粒が過冷却状態になったもので、
それが物体にぶつかると霧氷になる。
氷霧はそれとは別で、この場合は霧粒が凍って小さな氷の結晶になる。
気温がマイナス30℃以下になる極寒地でしか発生しない。
氷霧は日光を浴びてキラキラと美しく光る。
氷粒がもう少し大きいダイヤモンドダストもそうだが、
日の光を受けた氷霧が生む美しい光の現象は、
氷でできた高い空の雲の卷雲と卷層雲にもよく似たものが見られる。
霧の中でも、氷霧の宝石の様なきらめく美しさは幻想的で格別だ。
アルフレッド・スティーグリッツ
本物の雲もいいが、
私(ギャヴィン氏)は雲の写真を眺めるのも好きだ。
手を加えられていない写真がそのまま抽象芸術に昇華した感じがする。
自然を記録し、
同時にその時の感情を表現したものと言っていいのではないだろうか。
アメリカの写真家アルフレッド・スティーグリッツもそう感じていた。
スティーグリッツは1922年に、
「等価物」とのちに名づけた一連の雲の写真を撮り始め、
雲に芸術的価値を見出して、
雲だけの写真を撮影した最初の写真家となった。
等価物とは、高コントラストのモノクロ写真だ。
初めの数年は風景写真もあったが、
1925年以降、スティーグリッツはカメラを空に向けて
雲だけをフレームに収めた。
彼は雲の写真を自分の心の状態だと考えていた。
「私は生命の姿を想像する。
そしてその等価物を探そうとしている。」と
友人への手紙に書いている。
抽象芸術への情熱は、
写真を芸術の一形態とみなす事へとつながった。
二つは対立する物に見えるかもしれない。
芸術はリアリズムを否定してこそ前衛足りうるが、
写真は本質的にとりわけ具象的だ。
等価物シリーズの雲の写真には、
スティーグリッツがこの対立をいかにして解決したかが表われている。
雲は自然の抽象芸術━空の気分━であり、
写真で感情を表現する為の完璧な被写体なのだ。
「私はそれまで誰もしなかった事をした━そのアプローチは時として音楽に見られる」と
スティーグリッツは友人に書いている。
「私は雲を通じて人生哲学を書き留めようとしたのだ。
私の写真が被写体によって成立する物ではない事、
つまり特別な木や顔や室内、あるいは
特別な権利に頼ったものではない事を示そうとした。
雲は誰にでも手が届く。
いまのところ税金もかからない。」
a
沈む太陽と共に家路に帰り着こうとする頃、
雲に隙間が出来て、そこから高い空に浮かぶ
薄い雲の一片がのぞき始めた。
氷粒で出来た卷雲だ。
低い雲は暗くなっていたが、
その上の卷雲はまだ太陽の光を浴び、
黄金色のすじ雲が暮れていく冬の空に映えて輝いていた。
私(ギャヴィン氏)は嬉しくなった。
陰鬱な層雲は晴れ、
アメリカの詩人ジェイムズ・ラッセル・ロウエルの言葉が浮かんできた。
誰が知ろうか、雲がいずこへ逃げてしまったか
天には足跡さえ残さずに
目は雲の流した涙を忘れ
心は雲の悲しみを忘れ去る
雲ウォッチャーにとって、
天空の広がりは隠していた姿を現した時にこそ心にしみる。
たなびく靄や霧となって地上を訪れようとする雲を、
私(ギャヴィン氏)は、なじってしまった。
一日中空が晴れ渡っていたら、
これほどの幸福感に包まれるだろうか。まさか。
層雲は奇術師のスカーフだ。
何もかも消え去ったと思った瞬間にさっと取り去られる。
すると、そこには壮麗な空の景色が広がっているのだ。
写真は"a "と付いたものは私自身の撮影ですが、
それ以外は Yahoo!検索で調べました。
前回の「雲の研究」は2ヵ月前でしたが、
その後MLB開幕戦があったり、旅行があったりして
層雲のつづきが遅れてしまいました事をお詫びいたします。
層雲については、この回で終了です。
次回は、「層積雲」の予定です。
今回から、最近入手した「『雲の言葉』 300語」
という本より、雲に関するうんちくを少しご紹介します。
≪雲間の鶴≫ (うんかんのつる)
雲の中を飛ぶ鶴、転じて俗人からはるかに傑出した人物。
(C) 2024 ブログ JUGEM Some Rights Reserved.
久しぶりの雲の話、楽しく読ませて頂きました。
雲の研究が出てこないので気になっていました。
安心致しました。
aの写真旅行の時のでしょう。
良い雲が撮れていましたね・・・。
コメントありがとう。
『雲の研究』楽しんでいただけて嬉しいです。
旅行の時は、バスの中ではひたすら雲の写真を
撮っていましたよ。自宅にいては撮れない写真ばかり。
夢中になって(隣の人は、グッスリお休みの間も・・)
雲を追っかけていましたっけ。
こんばんは、aの付いた最後の写真
まるで煙の様ですネ
高く 低く 厚く 薄く二度と同じ形の雲は
出来ないと言うことでしょうか?
研究の種は無限∞ですね!
コメントありがとう。
最後の写真、これを見た時まず野焼きでも
しているのかと思いましたが、その後
お天気が急変して雪が降ったりしたので、
多分寒気が垂れこめていたんだと思います。
少しずつ分かってくると、雲にしても
花にしても面白さが増していきます。
ほんと∞です。
こんばんわm(__)m お邪魔します。
靄と霧の見分け方の基準が良く分かりました。
視程1キロが境界のようですが、霧に沢山の種類が有るとは知りませんでした、面白いですね。
ご自分で撮られた写真は、海外?国内?いい雰囲気が出ていますね。
けいこ様は本当にくじ運が良いのですね。
羨ましいかぎりです。
雲はいろんな表情があって面白いですね。
台風が心配ですが、明日のイベント
がんばります。
しまったんですかね。
まあ過激ですからね。
でも これが オイラなんです
オイラは 自分の言葉で 吐き出して行きたいし
コレが オイラの ポリシーなんです。
貴方と多分歳の差 は無いと思うけど
安楽を望むか 戦いを望むかの 違いなんでしょうかね。
コメントありがとう。
雲については、私もまだまだ興味が付きません。
いろんな事が解ると、次の関心ごとが浮かびます。
これからも、どうぞお楽しみに。
コメントありがとう。
私の撮った写真は、すべて4月のスペイン旅行の
写真です。
褒めて頂いて、嬉しいです。
雰囲気はあると思いますヨ。
コメントありがとう。
くじ運というか、めげずに応募する事だけです。
でも、当たると嬉しくなって、又応募してしまいます。
今日が、例のイベントの日だったんですね。
如何でしたか?お疲れになったでしょう?
でも、きっと大盛況だった事と思いますよ。
楽しいお話聞かせてね。
コメントありがとう。
すみません。ずいぶんご無沙汰してしまって。
きっと、私にはテーマが難しいので、時々は
覗かせて頂いているんですが、コメントする事なく
失礼してました。
又、次回はコメントさせて頂きますよ。
よろしくね。
つくづく 思い知らされます。
俺は いつまでも餓鬼で、でも そんな自分が結構好きだし 永遠少年 ヤッテ行きたいと思ってる。 俺の 素性は バレまくってる貴方には 俺の文面の本当のところは 解かちゃっテルと思うんで、これからも 良き理解者に なって下さい。
再度、コメントありがとう。
私の方だって、少しも大人になれきれない人間ですよ。
お互い様という事で、時々はコメントを残して下さいな。
私も出来るだけコメントするようにしますよ。
これからも、よろしく!、